食品ロスから学ぶこと

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことです。日本では、年間約2,550トン(農林水産省及び環境省「平成29年度推計」)の食品廃棄物等が出されています。このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は約612万トン(農林水産省及び環境省「平成29年度推計」)です。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成30年で年間約390万トン)の1.6倍に相当します。また、食品ロスを国民一人当たりに換算すると【お茶碗約1杯分(約132g)の食べ物】が毎日捨てられていることになります。

 平成27年9月に国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められている「持続可能な開発目標」(SDGs)のターゲットの1つに、2030年までに世界全体の一人当たりの食糧の廃棄を半減させることが盛り込まれました。国内では、第4次循環型社会形成推進基本計画(平成30年6月閣議決定)及び食品リサイクル法基本方針(令和元年7月公表)において、家庭系及び事業系の食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減するとの目標が定められました。また、本年3月に閣議決定された食品ロス削減推進法に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」においても、これらの削減目標の達成を目指し、総合的に取り組みを推進することとされています。

食品ロスの主な原因

食品ロスの主な原因として、「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」などがあると言われています。

直接廃棄は、言葉のとおり「そのまま捨てる」ということです。例えば買いすぎてしまい使いきれずに消費期限を過ぎてしまい捨てたり、食材の保存方法が間違えていたりして廃棄しなくてはいけなくなることなどが当てはまります。その他、人からもらった贈答品やお土産などで好みのものでなかったり、量が多かった場合もそのまま捨ててしまうなど、食べ物を食べることなく捨てることです。

食べ残しは、家庭でも外食産業でも、「作りすぎ」により、食べきれずに廃棄されることです。

過剰除去も家庭や外商産業で起こっていることです。不要な部分を除去する場合に、食べられる部分まで多く除去してしまうことです。

日本の食品廃棄物等は年間2,550万t

その中で本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間612万tのうち

事業系食品ロスは328万t

家庭系食品ロスは284万tとなっている。

農林水産省ホームページより

画像:農林水産省より参照

食品ロスを減らし、環境に配慮しながら食品産業の底上げ・振興に取り組むために、農林水産省では「食品リサイクル法」を定めています。

食品リサイクル法

正式名称は食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律で、食品の売れ残りや食べ残し、製造・加工・調理の過程において生じたくずなどの食品廃棄物の発生抑制と再生利用のために、食品関連事業者などが取り組むべき事項を掲げ、農林水産省により平成12年6月に公布され、平成13年5月に施行されました。

目的

食品関連事業者などから排出される食品廃棄物の発生抑制と減量化により最終処分量を減少させるとともに、肥料や飼料等としてリサイクルを図ることです。

対象となる食品廃棄物は、食品の売れ残りや食べ残し、製造・加工・調理の過程において生じたくずですが、家庭から排出される生ごみなどはこれには含まれません。そして、対象となる食品関連事業者(製造・流通・外食等)は、「食品の製造・加工・卸売または小売りを業として行う事業者」です。具体的には、食品メーカースーパーコンビニデパート八百屋青果店などがこれに含まれます。また、「飲食店業その他食事の提供を行う事業」も対象となり、食堂やレストラン、ホテル、旅館、結婚式場などがこれに含まれます。

食品関連事業者の義務

事業活動に伴って食品廃棄物等(廃棄物及び有価物)を発生させる食品事業者等については、再利用等の推進にあたっての役割の重要性を踏まえ、食品関連事業者と位置づけ、再生利用等の実施目標の達成と取組事業の遵守を義務付けています。食品関連事業者は、食品循環資源(食品廃棄物等のうち有用なもの)の再生利用等の実施率を平成18年度までに20%に向上させることを目標とする旨が明記され、発生抑制再生利用及び減量のいずれかの手法を選択し、または組み合わせることにより実施するものとされています。

食品リサイクル法の改正

食品リサイクル法施行後、食品のリサイクルについて一定の効果がありました。しかし、食品産業の「川下」に位置する小売業などの食品関連事業者の取り組みが低迷していることから、商品関連事業者に対する指導監督の強化再生利用等の取り組みの円滑化措置を実施しするため、食品リサイクル法が改正されました。(平成19年6月に公布、平成19年12月に施行)

定期報告の義務

食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上の食品関連事業者は、毎年度6月末までに、農林水産大臣などに食品廃棄物等の発生量、食品循環資源の再生利用等の状況を報告します。なお、コンビニなどのフランチャイズチェーンにおいて一定の要件を満たすものは、チェーン全体で一つの事業者とみなし、定期報告をしなければなりません。

食品廃棄物等の再生利用について

食品廃棄物に関しては一部がバイオ燃料として再生利用され、残りは焼却され埋立に使用されています。環境問題から地球温暖化防止に効果があるとされているバイオ燃料には注目が集まっています。しかし、食品を使用してバイオ燃料を製造する第一世代のバイオ燃料は食糧不足を招き、食料価格高騰や飢餓などを引き起こすものとして問題視されています。そこで、食べ残しや除去された部分を使用してバイオ燃料を製造するということが進められているのです。これらはもともと廃棄されているものですので、食料価格高騰などには影響せず、それでいて環境問題にも改善を与えるために研究開発が進められています。こうして廃棄された食料を利用して燃料を作るという循環型経済のシステムになっているのです。

農林水産省の取り組み

農林水産省では、新型コロナウイルス感染症対策の影響で発生する未利用食品の販売を促進するビジネスを取りまとめ、公表しています。

近年、ICTやAI等の新技術を活用した未利用食品の販売(シェアリング)や食品の需要予測など、食品ロスの発生防止につながる新たな民間ビジネスが開始されており、今後の食品ロス削減に向けた取り組みとして期待されています。

また、食品関連事業者から発生する未利用食品のフードバンクへの寄附を推進するため、これらの食品に関する情報を集約し、全国のフードバンクに一斉に発信する取り組みを行っています。

フードバンク活動とは

食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供する「フードバンク」と呼ばれる団体・活動のことです。まだ食べられるのにも関わらず廃棄されてしまう食品(いわゆる食品ロス)を削減するため、こうした取り組みを有効に活用していくことも必要であると考え、農林水産省では、食品ロス削減を図る一つの手段としてフードバンク活動を支援しています。令和2年3月31日の時点で120団体がフードバンク団体として活動しています。

詳しくはこちら⇒農林水産省ホームページ

食品ロス削減への取り組み例

食品ロス削減のための取り組みの例としてセブン&アイについて述べます。

セブン&アイ・フーズシステムズではセブン&アイグループの環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」に沿って、環境保護や食品ロス削減、省エネルギーなど様々な課題に対して、フードビジネスという事業を通じて取り組むことで、継続的な環境活動を進めています。そうした取り組みが外部からも評価され「日経環境経営度ランキング」の小売部門で外食企業として2013年~2017年までの5年連続で1位に輝いています。

セブン&アイ・フードシステムズでは、食品ロスの発生抑制を最優先で取り組んでいます。購買物流部によるメニュー販売精度の向上により在庫の適正化や、店舗での客数計画精度の向上による発注量や前準備量の適正化に取り組んでいます。その上でほぼ全店で毎日発生する使用済み調理油の100%リサイクルをはじめ、食品残渣の肥料化、メタン化など多様な処理に取り組み、政府目標である40%を超える食品リサイクル率を達成しています。

食品リサイクルループの構築

セブン&アイ・フードシステムズでは、国の再生利用事業計画(食品リサイクルループ)の認定を受け、外食5社合同で食品廃棄物の課題に取り組んでします。具体的には、名古屋市内のデニーズや参加各社の店舗から排出される食品残渣を肥料化し、契約する養鶏農場で利用、収穫された卵やその製品(マヨネーズ等)を仕入れるというスキームを構築しています。外食各社は食品廃棄物の回収効率やリサイクル業社の少なさといった共通の課題を抱えており、合同で取り組むことでその解決を図ります。企業の枠を超えた合同でのリサイクルループ認定は日本初となり、この取り組みだけでもデニーズは年間15トンの食品廃棄物を資源化しています。

お客様と考える食品ロス

日本ではまだ食べられるのに捨てられてしまう食品の約2割が外食産業から排出されているといわれています。セブン&アイ・フードシステムズでは、外食企業の責任において食べきりについての取り組みを推進しています。2020年2月末現在、全国13の自治体と「食べきり協力店」などの食品ロス削減の推進店として登録をしています。また、デニーズでは2019年10月からメニューブックに食べきりやすい「少なめライス」を選べるよう明記し、食品ロス削減国民運動のロゴマークである「ろすのん」を表示しています。これからも、店舗においては自治体やお客様と一緒に食品ロス削減のための食べきり推進の活動を継続していきます。

参考資料・画像:セブン&アイグループホームページより

まとめ

食品ロスを削減するために飼料や肥料、バイオ燃料などの再生利用をしていくことも大事なことですが、食品ロスを減らすための小さな行動も、一人ひとりが取り組むことで、大きな削減につながっていきます。食べ物を無駄にしないという意識はとても大事ですが、行動に移すのはなかなか難しいです。そこで、買い物に行く前に冷蔵庫の中を確認して「買いすぎない」、料理を作る際に「作りすぎない」、外食時に「注文しすぎない」そして「食べきること」、日常生活のちょっとしたことを実践していきましょう。

error: Content is protected !!