Tag: 書評
わたくし、多田(タダ)が、読んだ本について勝手に思ったことを書いていきます。
本日は、水野和夫氏の「資本主義の終焉と歴史の危機」です。
この本は、2014年の経済関連の新書で一番売れたらしいです。
水野氏は日本大学国際関係学部教授。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官を歴任されていた方です。
この経歴からすでに、経済や国家財政に詳しい方だろうと想像がつきますね。
このような方が、資本主義が終わろうとしていると言っていると、
それはどういう事なんだろうと興味がわいてきませんか?
資本主義が終わるということは、今の経済システムが崩壊するという意味なのか、そうなったら今の生活はどうなるのか、仕事は?お金は?日本は?世界は?と気になりませんか?
内容は、第5章まであり、第1章はアメリカ、第2章は新興国、第3章は日本、
第4章は西欧について記載され、最後の第5章で資本主義がどうして終わろうとしているかが書かれています。
詳細はぜひ読んでいただきたいので書きませんが、
これを読んで正直納得しました。というより、日頃この経済システムで一体どのくらいの人々が幸せなんだろうと疑問を持っていた私に、一番適切な答えをくれたように感じました。
…資本主義の本質は「中心/周辺」という分割にもとづいて、
富やマネーを「周辺」から「蒐集(しゅうしゅう)」し、「中心」に集中させることに変わりありません。…
つまり、資本主義は、周辺という「途上国」から中心である「先進国」に富が集中するしくみです。簡単に言えば、途上国から安く原料を輸入して、利益を得る方法です。
資本主義誕生以来、少数の人間が利益を独占するシステムなのです。しかもその少数とは、1890年から2001年まで地球の全人口のうちの約15%だけです。この15%には、アメリカや日本も含まれていました。
ところが、今のグローバリゼーションの時代では、途上国や新興国も資本主義の恩恵を受けるチャンスが出てきたことから、これまでのように、「周辺」の国から利益を得ることが難しくなります。
そうすると、自国内にも「周辺」を作るようになります。これが日本では非正規雇用の問題(浮いた社会保険や福利厚生コストから利益を得る)につながるのです。
資本主義が持続するためには、「周辺」が必要です。したがって、「周辺」がなくなったら別の「周辺」を生み出そうという力が働きます。資本主義は、利潤を求めて常に前進していくしかないからです。
もはや拡大・成長の余地はないのに、これを続けていけばどうなるのでしょうか。
日本の中に「周辺」が生まれ、今まで幸せだった人も、幸せと感じられない社会になるかもしれません。
このシステムが果たして、現代に適した経済システムと言えるのでしょうか。。
水野氏は、このままでは資本主義は自ら崩壊に向かうだろうと言っています。ですが資本主義に代わる新たな経済システムを提唱する学者はまだ現れていません。
ならば、崩壊ではなく、現状を維持する方向にシフトするべきではないか、それが「ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ」です。
ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレの社会を実現するには、思うよりも難しいようで、日本であれば、財政基盤強化のため増税やエネルギー問題の解消が必要となるようです。
確かに資本主義が崩壊することを望んではいませんので、ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ社会は一定期間有効かもしれません。
つまり一度「拡大・成長」の理想を捨て、現状維持という一見後ろ向きかもしれない状態を目指そうということです。
現状維持という考えには賛成でも、財政基盤強化のために消費税や法人税の増税が必要という点は疑問が残ります。
増税を行い、財政状態を健全にしておいて、新たな経済システムが誕生するのを待つという理由では納得する部分もありますが、消費税は即生活に影響が生じること、法人税は世界各国とのバランスが重要なことなどから、グローバルな環境下において、日本単独で増税を行っても意味がないように思うからです。
もう一方で、仮にエネルギーが国内で安くつくれたら、企業のコストも減るので、多少法人税が高くても、日本に企業が残ってくれるかもしれません。そういった意味では、再生エネルギーを活用していくことが最優先なのかなと思います。
最後に、そもそも15%に含まれる企業や資本家の利益に適切に課税できているのだろうか、それこそが最重要だろう、とまた疑問がわいてきました。